第78回 白丸を大切に
ジャズの第一の魅力は言うまでもなく即興的に奏されるアドリブにある。しかしその対極には忠実なストレートメロディ(主旋律)をじっくり味わえるスローバラードがあり、こちらも捨てがたい魅力を持っている。
ジャズの名手と言われる人たちはアドリブの名手であると同時にゆったりと歌い上げるバラードの名手でもある。テナーサックスの巨人、ジョン・コルトレーンはモード奏法によってハイテクニックなアドリブソロを完成させた人である。しかしその一方で晩年の“Ballad”では心の底から紡ぎだされるようなストレートメロディが深い感動を与えてくれる。
昔先輩ジャズメンから「バラードでは白丸を大切にしろ」と教えられた。白丸とは2分音符や全音符のように長く伸ばす音のことである。つまりバラードをストレートメロディで演奏するには音数を少なくし、白丸の一音一音に全神経を集中する必要があるのだ。白丸の音を響かせるには音質、抑揚、強弱、などの基礎的な技術に加えて唄心が求められる。無神経な白丸では聴く人の心は捉えられない。
ライブのメニューに私はスローバラードを必ず取り入れる。曲の最初に白丸を一音吹いただけでお客様に「良いなあ!」と感銘を与えられるようになれば本望なのだが。 |
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